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ケルクショーズ・イリヤ(Quelques Choses - il y a)

らららぎの思想の河床。記事まとめ▶ http://chatte.hatenablog.jp/entry/2017/03/05/011325

無銭飲食という文化

La acción estuvo perfectamente coordinada: cuando el servicio del Hotel Carmen de Bembibre, León, sacó la tarta, se encontraron el salón vacío. Los 120 invitados al convite del bautizo se habían levantado y dejando tras de sí una deuda de más de 2.000 euros. "Fue cosa de un minuto y no se pudo hacer nada por detenerlos, porque era algo que ya habían previsto y salieron en estampida" - lamentaba el hostelero Antonio Rodríguez al relatar a la prensa el que ya se considera "el mayor sinpa de la historia". Explicó a la radio SER que los comensales "estaban bailando y desaparecieron; en un minuto marcharon las cien personas". "No fueron saliendo cuatro a cuatro, no, no, todos de golpe", detalló. Los empleados del local no pudieron pararlos, añadió: "No te puedes enfrentar a esta gente así, porque son muchos".
――「Unas cien personas salen corriendo de restaurante sin cancelar la cuenta


 どえらいニュースが入ってきたというか、被害にあった店には申し訳ないが、腹を抱えずにはいられなかった。日本でも既に話題になっているようだが、まるでフラッシュモブのようなノリで食い逃げをするスペイン人。120人で2000ユーロの宴会型無銭飲食、しかもみんなでダンスをしながらすばやく逃げるという絵面の珍奇さ。「estaban bailando y desaparecieron; en un minuto marcharon las cien personas/ダンスをしながら消えていったんだ、ほんの一分のあいだに百人ものひとが」。食い逃げに一分もかけるという発想がぼくにはわからないが、落語の「時そば」も似たようなものなのかもしれない。
 「el mayor sinpa de la historia/史上最悪の食い逃げだ」というオーナーのコメントに出てきた「sinpa」(シンパ)という単語が気になった。調べてみるとどうも食い逃げという俗語らしい。否定を意味する「sin」(シン)と支払いを意味する「pagar」(パガール)を複合して短縮した俗語のようで、むりやり日本語でもおなじことをするならば「ムセン」と言ったら無銭飲食のこと、というイメージだろうか。
 食い逃げを含む「支払い」行為は、その国柄のようなものが出ている気がする。フランスのカフェを見れば、机にお金を放る感じがお洒落だし、それで通用する。かと思えば煙草を吸いに出るには身分証明書を預ける必要がある。
 ドイツでは個人主義が徹底されているので、かならず数パーセントの単位で割り勘になる。恋人同士でも交互におごり合って完全に割り勘になるようにするのが基本。「Geizig macht glücklich/ケチがあなたを幸せにする」とか、「Geiz ist geil/ケチはよい」とか、そういうキャッチコピーが受けるぐらいケチ根性のようなものが土壌になっている。チップもすくなめ。
 アメリカだったらチェック(小切手)とか、最近ではチェックカードとか、やはりかっこいいなと思ってしまう。小切手やカードがあるから、紙幣をそこまで持ち歩かないのも文化的かもしれない。その代わりコインが面倒くさい。チップは細かいところまで計算して10%になるようにして支払うひとが多い印象。
 日本人のぼくらの支払いはどうだろうか。どうやって支払うのがたのしいだろうか、あるいはうれしいだろうか、おもしろいだろうか、ストレスフリーだろうか、スムーズだろうか、印象的だろうか、芸術的だろうか、文化的だろうか。レシートはもらわない主義とか、お釣りの枚数と種類の最適化する小銭の出しかたとか、それをしようとして混乱する客と、おなじく混乱する店員、結局10円おおくて変な空気で精算することになったり。ぼくのことですけど。
 そういう支払いにも名前がつくようになれば、文化的になってゆくのかもしれない。シンパとか、ムセンみたいな感じで。