来年から東アジアが大変になるので、とりあえず心の準備だけしておこうぜ

We should tell China that we don't want the drone they stole back.- let them keep it!
9:59 AM - 18 Dec 2016――Donald Trump

 ぼくはトランプに逆張りしている人間なのだが、この日の発言は、なかでも気に入っている。せっかくなので、トランプ氏の発言のバックグラウンドを簡単に説明してみようと思う。
 現在の中国(中華人民共和国)には、中国じゃなさそうな地区がいくつかある。たとえばマカオは、植民地時代――ヨーロッパの強い国々が世界各地に刈り込みを入れていた時代――にポルトガルが行政権を獲得したため、そこから1999年に返還されるまで110年間ずっとポルトガル領だったとか、香港はイギリスにとられていたから100年間イギリス領だったとか、それでいまでも「特別区」として認定されていて、中国なんだけれど中国じゃなさそうな地区になっている。
 そのなかでも問題なのが台湾で――植民地時代ではなく第二次世界大戦のとき――、中国のなかで内戦があって、共和党と国民党というふたつの派閥がもめていて、そのもめ事に勝ったのが共産党毛沢東)。中華民国を新たに打ち立てる。追い出された国民党(蒋介石)は、台湾島というところで独立を主張した。いまもその状況が続いていてむずかしい。
 用語としては「一つの中国」と呼ばれていて、中国側は「マカオも香港も台湾も中国だよ、みんなでひとつだね」という立場をとっていて、独立を認めていない。外交のときもずっと「一つの中国」という原則をゴリ押しで交渉していて、いちおう、だいたいの周辺国が認めている。日本も「一つの中国を認めはするけど、台湾とは友だちだよ~」と安倍総理が公表しているし、アメリカも「とりまrecognize~」と言っている。
 中国との付き合いのなかで、だいたいの国が建前として認めてきたことを、このたびトランプ氏がセンター返しで看破した
 「一つの中国」の原則として、新たに大統領が就任しても台湾とは会談してはいけないことになっていたらしい。それをトランプ氏が堂々と破り、こんなツイートをしている。

The President of Taiwan CALLED ME today to wish me congratulations on winning the Presidency. Thank you!
Interesting how the U.S. sells Taiwan billions of dollars of military equipment but I should not accept a congratulatory call.

 「台湾の大統領からお祝いの電話もらったよーありがてえ」と「台湾って10億ドルも軍用品買ってくれてるのに、お祝いの電話をとるべきじゃないとかいうの面白いよね」。これらのツイートで、これまで37年間、台湾からの当選祝いの電話や会談を拒否していたことが明るみになった。
 「一つの中国」原則にとって、これはあってはならないことで、中国側もかなり刺激されていて、南シナ海の公海――どの国にも属していない海域――で調べものをしていたアメリカの無人水中探査機を中国側の船が盗むという事件が起こった。それに対しての発言が、冒頭のトランプ氏。「返さなくていい!持たせておけ!
 これに対して「個人的なビジネスならそれでもいいけど、外交ってものをわかってないよね」という批判が殺到している。それを否定するつもりはないが、オバマ大統領の東アジアのリバランスはなんにもうまくいってなかったどころか、中国に奪われっぱなしなので、トランプ氏は強気の政策に出ようとしているのではないかという見通しもある。
 フィリピンではドゥテルテ大統領――麻薬組織を全滅させると言ってほんとうに処刑している過激な新大統領――が、アメリカ軍を追い出そうと躍起になっているし、中国とアメリカのバランスは崩れそうだし、2017年は日本もいろいろと巻き込まれるかもしれない、ということが言いたかった。
 巻き込まれるのは確かに迷惑だが、ひとつの国の独立をみんなでずっと認めないでいることにも無理がある。事情が複雑なのは百も承知だが、こどもにどう説明していいものかわからない。もちろん台湾のなかにも「一つの中国」に賛同しているひとだって数多くいる。そういったところにもむずかしさがある。
 植民地時代や戦時中のツケが東アジア・東南アジアにはいくつも残っていて、それを自力で解決するだけの余力はないと言っていい。そこに合衆国が入ってくるのは、必然と言えば必然で、オバマ大統領はかなりぬるめで様子を見ながら慎重にやっていた。それはそれでいいのだが、結局はなんの調整もできなかった。いまではレームダック――落選確定の政治家がなんの仕事もしないこと――になってしまっていて、トランプ氏がまだ任期でもないのにいろいろと手回しをしている状況になっている。
 トランプ氏は、外交下手そうだけど巧そうにも見えてくる。オバマ大統領がやらなかった「力」の外交を持っている。それが吉と出るか凶と出るか、それは中国の対応や、日本の動きにも関わってくるだろうと思う。トランプ氏の決定ですべてが決まるわけではないから、そこで後手になりながらもうまくやれるだけの余力を日本も持っておかなければいけないと感じる。ぼくが政治するわけじゃあないけれど。
 というわけで、繰り返しになるけれど、どう考えたって来年から東アジアがめっちゃ動くと思う。いきなりびっくりしないように、心の準備しておいてもいいのかなって感じの記事でした。