ケルクショーズ・イリヤ(Quelques Choses - il y a)

らららぎの思想の河床。記事まとめ▶ http://chatte.hatenablog.jp/entry/2017/03/05/011325

過去に貢ぐ

 週刊誌に『FRIDAY』というものがあって、今週号(11/18号 p.72)に 「風俗で人生を逆転させた貧困女子たち」という特集が載っていた。アキという三十歳の女性が、風俗を始めてから客の好みなどを研究し、毎月〈35万円〉の貯金ができるようになったという話の最後に、こんなことを言い残す。

 

「通帳を眺めて、昔の自分に貢いでる気分になって幸せです」

 

 昔の自分に貢いでいる気分――。最初は、どんな気分なんだろうと思ったけれど、だんだんわかるようになってきた。どんなにお金がたくさん入ってきても、じぶんを保っておくための、狂ってしまわないためのメルクマール。あのときのじぶんのための、いたって非生産的であることの装いは、私を安定させる。現在形で稼いだ金は、手のひらからこぼれて過去へ流入する。私は過去から順番に富んでゆく。

 いまぼくがやっていることも、あのときだれとも仲良くできなかった過去に〈貢いでいる〉のかと思うと、自然と安心し、妙に納得できる。自己正当化することの功罪はあれど、ラフプレイな自己完結をじぶんのために使い尽くすのは、すごくいいなあって思った。