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ケルクショーズ・イリヤ(Quelques Choses - il y a)

らららぎの思想の河床。記事まとめ▶ http://chatte.hatenablog.jp/entry/2017/03/05/011325

「真贋を見極めることってそんなに大事なことなんですか」という問いで殴られた話

とある日のとある政経懇話会に出席して、とある古美術鑑定士の講演を聴いた。あまり具体的に書けない訳は「政経懇話会」みたいな単語から感じ取って、みなさんの知性で察してもらいたいが、とにかくそこでこんな話を聞いた。 掛け軸の真贋を確かめるひとつの…

「専念してください」と言い続けること

ぼくは自動車の運転免許を持っていないから、つい一年半前まで、クルマのことなんか、なにひとつ知らなかった。ところが、同人誌の編集作業で自動車について大量に注釈をつけなくてはならず、図書館にこもって入門書と専門書を交互にながめてことばを覚え、…

彼女たちを代理するもの

ぼくの、むかしの恋人の話をしよう。 ぼくと付き合ったひとは三人いるから、だから、三つの短いお話になるけれど、できるだけ退屈しないように喋ろうと思う。 どの恋愛も、大げさに言っておかしかった。記憶の一部が文字化けしているから、すこし不鮮明なと…

無宗教な捕虜の秘密

俺は捕虜を志願した。 そうするしかなかったとか、イタリア人は戦争が嫌いだとか、そういう理由からではなく、捕虜のほうがまだ、じぶんの運命を管理できるような気がしたから。軍人として生きるか、捕虜として生きるか、そのふたつが俺を動かす車輪だとして…

ぼくたち、わたしたち、いまが、旬です!――リスクヘッジがリスクになることもある

12/9のスポーツニッポン名古屋版を読んでいたら、柿谷選手とグラビアアイドル丸高が結婚したという明日には忘れてそうな内容のニュースが報じられていた。そこに「復帰から4日で甘~い♡俺たち今が旬です♡」と記されていて、いまが旬というのは恐ろしいアナロ…

とある神社のギリシア語講座

「里志くん、今日って部活?」「霧砂さん、いたんだ。ぼくはこのままちょっと」「またあの神社、行くんでしょ」「正解。ふふふ、よくぞ正解した、約束通りぼくのお道具箱をアンロックしよう」「なに、そのノリ」 女子というのは、なぜこうも男子のノリについ…

日本を旅行するリョコウバトの逆さまさ

「Once upon a time, an odd-character Passenger Pigeon ― oh, it's me, haha ― was flying and wandering over Pacific Ocean since he had an-always-bad-sense-of-directions. But there was the one thing, like, he was surely sure ― hopefully almos…

名前が、読めません

いろいろあって、いま名付けなくてはいけない案件をひとつ抱えている。おそらくその名前は、決まり次第で変更不可能になるもので、期間にして一瞬の可能性もあるし、へたすると(うまくいくと)何十年も「名告り」として存在する――ぼくの存在を表象する――こ…

千代恋あめの小説を見る(2)――『クイズゲート』

『クイズゲート』(妖怪三題噺「アイドル マグカップ ゲート」) ※注意事項は前回の「千代恋あめの小説を見る(1)――『原稿団地の少年』 - ケルクショーズ・イリヤ(Quelques Choses - il y a)」を参照。※ショート・ショートのネタバレ(オチバレ)があり…

ヘンな100の質問(questioned by lalalagi)

前回:日常100の質問(questioned by lalalagi) - ケルクショーズ・イリヤ(Quelques Choses - il y a) 前回の回答者様: 千代恋の日常、午後(前半) - kurayami. 千代恋の日常、am(後半) - kurayami. 練物語 「日常100の質問」に答えてみた(前編) …

ユニクロに向けられた文春砲の、たったひとつの卑怯な点

かつて『ユニクロ帝国の光と影』を上梓して、名誉毀損として二億円を超える損害賠償を求められた横田増生さん。その後の雑誌インタビューで社長の柳井さんは「悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど。(…)アルバイトとしてうちの会社で働い…

千代恋あめの小説を見る(1)――『原稿団地の少年』

今日は、おなじサークルメンバーの千代恋あめ氏の小説を見てゆく。読むというよりは、見る。編集長の目で見るか、小説家の目で見るか、校正の目で見るか、翻訳者としての目で見るか、友人としての目で見るか、あるいはそれらすべての目で見てゆく。 最初に断…

ぼくは女性を「顔」で選ぶよ、という価値観=好み=趣味の言い訳を始めます

若気のアフターシックスというものは、「とりあえずビール」からフライドポテト=からあげ=シーザーサラダ=焼き鳥十種盛り(塩)のコンボが決まれば、あとは一本道、お互いの恋愛観について粗雑な――きわめて粗雑な――意見交換会をするだけである。飲み会が始ま…

"game"=肉(?) 『バイオハザード5』と「いのち」――自然のなかで交換不可能になってゆく自己

昔から仲良い友人らと遊ぶときたまに「私この中の誰よりも多く、命を日常的に弄んで殺して生きてるんだな」とか思うことある。良し悪しではなくそう思う。https://twitter.com/tubayame/status/803163345960386560 《じぶんの「いのち」をどうやって相対化す…

星座は星より善いものか

太陽の2倍の大きさを誇るシリウスまでは8.6光年あり、光が届くまで8年ほどかかる(歩いたら23億年ほどかかる)。プロキオンは11光年、べテルギウスは640光年ある――死ぬほど巨大で全天のうち9番目に明るいためよく見える。 厳密さを無視して単純に計算すれば…

君でありながら君でないものから君自身を知る哲学の死のリハーサル

気取った表情でアルベール・カミュの『異邦人』の原著をひらいた。 本題につながっているから、簡単なあらすじだけでも書いておこう。 物語は、「Aujourd’hui, maman est morte./今日、ママが死にました」というドライかつ幼稚な出だしから始まる。 母親=…

日常100の質問(questioned by lalalagi)

-------------------------------------------------- ・普段考えていることをできるだけマイルドに質問してみました。 ・「ありますか/あるでしょうか」などの問いは、「あります/ないです」だけではなく、いろいろ語ってくれたらありがたい限りです。(…

いま現在の、ぼくなりの、恋バナ――「好きなんだから仕様がない?」

「けれども私は、そのころすべてにだらしなくなっていて、ほとんど私の身にくっついてしまったかのようにも思われていたその賢明な、怪我の少い身構えの法をさえ持ち堪えることができず、謂わば手放しで、節度のない恋をした。好きなのだから仕様がないとい…

「興味ない人から向けられる好意ほど気持ちの悪いものってないでしょう?」――正論風感情論に共感したがる女、刺さりたがる男

横槍メンゴさんの少女漫画『クズの本懐』がノイタミナでアニメ化するということで、改めて第1巻(第4話「ハイスクールララバイ」)に出てくる台詞について考えてみようと思う。 すでに煽り画像としてもおなじみの「……興味のない人から向けられる好意ほど/気…

【身内ネタ】アドベントカレンダーの説明を始めます

------------------------------------------------※身内ネタ+ハイコンテクストです。特に身内ネタ部分に関しては、このあたりをまんべんなく知っていないとなんも面白くないと思います……。あとめがねさんとちくわさんのリプライとか。それでも読んでみよう…

だれの目を通して世界を見るか

今日はひさしぶりに、ロランバルトの『明るい部屋』の原著を開いた。そもそもぼくがバルト好きなだけなのもあるけれど、二大写真論と言われているだけあって、やっぱりおもしろい。 「Le nom du noème de la Photographie sera donc: "Ça-a-été”, ou encore:…

デスクワークは緩慢な死を加速する

「Get Up!: Why Your Chair is Killing You and What You Can Do About It」という本を読んだ。うさんくさいタイトルだが、要するに「椅子に座っていると死んじゃうよ」という話で、いろいろな実験やデータ、症例、椅子を撤廃したオフィスや学校の事例などが…

ぼくは裸のまま本音を妄想する

デブで、キンキン響く声で、風呂に入っていないのではないかというほど毎日のように汗臭くて、真面目なことなのに笑いながら話すひとが職場にいる。この書きからわかる通り、ぼくはこのひとのことが全人格的に嫌いで、軽蔑さえしていると言える。話しながら…

1ビットで使えることば

飲み会の席で、ぼくがなにかを言ったのに対してちくわくんが「1ビットで使えることばですね」と言った。 そんときはたぶん「なにそれ面白い表現」と思って騒いだと思うのだが、なんせアルコールに酔わされ記憶系が前後不覚に陥っていたので、なんのことも覚…

実現不可能な感嘆と付き合う

「鳥みたいに空を飛びたい」 これほどありふれたファンタジーもなかなかないが、大学かコミュニティでビジネスライクに思考する癖がついてしまったひとは、このファンタジーに対してこう答えてしまう。「いや、鳥ってどれだけ羽ばたいているか知ってて言って…

じぶんにとって都合のよい黒白思考は悪だろうか――「わがまま」を考え直す

じぶんにとって都合のよい黒白思考は悪だろうか――この問いを何度か審問にかけてきて、「悪である」とか「メンヘラ的な悪性がある」という答えを出してきたし、心理学的にも「認知のゆがみ」と呼ばれていて、悪い意味でタフな思考だとみなされている。改めて…

「万障お繰り合わせの上」を気づく――推定した気になっていた相手のストレス

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27038320 今年の五月に発表された心理学の論文に「Stress at Work」というものがあって、なんか結構考えさせられることが書いてあった。内容は、仕事において高い地位にいるひとの幸福度やストレスに関するデータと分析…

星を見た

友だちを誘って流星群を見に行った。流星群なんて口実で、誘いやすいように「日付」が決まっているものならなんでもよかった、と今では思うが、とにかくあのときはいつの間にか誘っていた。それほどたくさんの星を見ることはできなかったけれど、雲の隙間か…

過去に貢ぐ

週刊誌に『FRIDAY』というものがあって、今週号(11/18号 p.72)に 「風俗で人生を逆転させた貧困女子たち」という特集が載っていた。アキという三十歳の女性が、風俗を始めてから客の好みなどを研究し、毎月〈35万円〉の貯金ができるようになったという話…

『君の名は。』を観てきました――女子高生と観れる映画というだけで満点です

※もちろんネタバレ(というか観てないと具体的に意味が浮かんでこないような書き方)です。 観終わっていろいろ考えたけれど、やっぱりどうしても動かせなかったのは、〈「あーわかる、胸キュンしたいよね」とじぶんに言い聞かせながら観なければならなかっ…

プレゼントとか、おめでとうとか、そういうののむずかしさ

毎年毎年、誕生日が近くなると、利用した覚えのない店から「おめでとうございます!割引です!」みたいなダイレクトメールが届く。要するに、特別安くしてやるから来いよということで、日本語では「紐付き」と表現する。 そういうビジネスライクな「おめでと…

相聞のお誘い(続いたら文フリに出します)――ひとは文章が仲良くなれるのか、ことばの実用をことばで問う試み

また立ちかへる水無月の歎きを誰(たれ)にかたるべき。沙羅のみづ枝に花さけば、かなしき人の目ぞ見ゆる。――芥川龍之介「相聞(さうもん)」『芥川龍之介全集9巻』 万葉集のジャンルとして発明された「相聞」。そのまま「さうもん/そうもん」と言ったり、…

ちがいすぎることなんてあるのだろうか

じぶんとあのひとでは生きてきた人生が〈ちがいすぎて〉、理解し合えない(わかり合えない)――なんていう結論を出したがるひとがおります。そこに共感者が現れて「うんうん、そうだよね、人間ってみんなちがうから理解し合うなんて不可能なんだよ」などとわ…

解凍されない情熱をもってぼくは書き続けることができるだろうか(カフェで改稿を重ねながら思うぼくの未来)

新人作家が必ず直面する岐路にいる。思考が沸騰してゆく。情熱を解凍してしまう冷たい問い。小説家を続けるのか、辞めるのか。続けることを選ぶ場合、書き続けなければならない。書かないことを選べるけれど、書くということは決まっている。辞めてしまえば…

「趣味:天体観測」ではなくなったけど

職場に天文学科卒の同僚がいて、その子と飲みに行けば、延々そらのことを教えてくれるわけです。赤外線での観測は可視光線より面倒くさいだとか、宇宙にも地震があるだとか、太陽写真像のデジタル化のやりかただとか、ガンマ線バーストの謎だとか。 どうして…

「私が正しくて、あなたが正しくない話なんですけれど、大事なことなんで聞いてください」――そんな話を誰が聞く? あるいは近視眼的な啓蒙活動と対話の場を劈くこと

さかなくんがわかりやすくて、あのひとは「知ってほしい」に気持ちを絞ったから、正義は見せないし、愛護も見せない。だからこそ、入ってくるものがたくさんあります。「啓蒙、正義、愛護、すべての混在する気持ちから一歩退いても残ったもの」をスタイルに…

動物愛護活動家がじぶんのエゴに無自覚なことによって、動物愛護活動自体が周りに馬鹿にされるのって、もったいなくないですか

※以下の記事は[20160517]の再掲載です。 飼い主に責任があるように、じつは、動物愛護活動家にも責任があります。それは「動物愛護活動をエゴで汚さないこと」です。動物を捨てるひともいれば、動物を保護(愛護)するひともいます。それはとても当たり前の…

140字小説レビュー:「雨谷ハル」を変奏する――物語に「こくご」を宿す作家

・まえがき――雨谷ハルを変奏する 納期が近づけば、ひとりあたりの負担が増えて、おのずとみんなで残業する羽目になる。ぼくと女の子三人、休憩室の代わりにもならない狭い給湯室でひとりの子が世論を言った。 はあ、残業ってやだね。よく覚えていないけれど…