お引っ越し日記:〈1〉引っ越しの条件を枚挙しながら《ちょうどよさ》を探求する

最後に引っ越したのは六年も前のことで、身辺事情もめまぐるしく変化し、そろそろ本気で次の住処を探そうと思った。ほんとうなら最初の一年で引っ越してもよかったのだが、我ながらよく六年も住んだものである。いまは広めの2DKにひとりで住んでいて、ふつう…

九井諒子『竜の学校は山の上』・表題作

丸井諒子さん…じゃなくて九井諒子さん。間違い探しみたいだ。初期作品集の本作には、読み切りの漫画が九編ほど収録されている。そのうちの一作である『ダンジョン飯』という読み切りは「会話が音ゲー」と評判で、いままさに続編が出ているらしい(つまり読み…

山田詠美『風葬の教室』

ログライン的に言えば、「都会から田舎に引っ越してきた少女が、自身に向けられるいじめ行為を《風葬的に》リジェクトする話」となるだろう。平林たい子文学賞受賞作で、直木賞受賞後の第一作目。ここまで書いたのかと恐ろしくなる。 この物語にはいろいろな…

東直子『東直子集 セレクション歌人26』

短歌っておもしろいな、と初めて思ったのは、穂村弘さんのひどく偏った――かつ偏っていることがプロフェッショナルの文脈で完璧に自覚された――短歌エッセイを読んだときだった(『短歌という爆弾』)。そのあと短歌をいろいろと鑑賞するようになって、当然、…

ありのままとは、原状なき回復のことである

アナと雪の女王(原題は「Frozen」)の主題歌が流行る前にも後にも、「ありのままの自分」というのは喧伝され続け、90年代を生きるひとに商業化された「癒し」を与えてきた。ここで問題となるのは、「Let it go」の訳語としての「ありのままの姿を見せる」が…

読書猿『アイデア大全』――知的で当然という殴り掛けに応じること

受験生のときだったか、くるぶしさんのブログを知って、よく熱心に読んでいたのが本当に懐かしい。そんなノスタルヂアを刺激する著者名――「読書猿」――に賭け、本当に1,700円の価値もあるのか値踏みすることもなく、購入に踏み切った。 アイデアを生む方法(…

誰かに何かを伝えたい気持ちは、全くなんでもない気持ちである

誰かに何かを伝えたいってどういう気持ち?— 御みつ (@aotohmitzu) 2017年1月29日 いやあいい問いだ…。考えずにはいられない。ぼくの言語運営能力じゃあ、どうせこれっぽっちも言語化できないが、やれるところまでやってみよう。 「自らのなにかを犠牲にして…

幸田文『包む』あとがき

何をお包みいたしましょう、という云いかたは、いまではほとんど聞かれなくなってしまった。私は子供のころそれをお菓子屋さんでよく聞いた。小学校も三四年になるとお使いがおもしろくなって、頼んでもさせてもらう。はゝはお使いに行くさきを択んでさせて…

ピエール・ルメートル『その女アレックス』橘明美・訳

直木賞を受賞した恩田陸さんが新聞のインタビューで「年間で300冊ほど読んでいる」と語っており驚愕した。石田衣良さんも作家にとって読書は必要だという話をしており、作家の末席を汚している私も、なんとなくそんな気がしている。特に彼は「翻訳もの」もバ…

「同じ愛し方」に悩むひとたち――恋人を格付けすると「添えなさ」に気づけなくなる

前にも感じたことのある気がするけど、そうでない気もする。そんなやつ。あー、やっぱ1番になるって難しいね。うちいつになったら1番になれんだろ。同じ愛し方されてんだろうな、って事はうちの元カレもうちのこと思い出すとにやけちゃったりするのか? 笑っ…

幻想だからなんなのか、形骸化だからなんなのか――相手のことばにひたりつくこと

「そんなの幻想にすぎない/偏見にすぎない/言い訳にすぎない」とか、「それは形骸化している/時代遅れだ/負の遺産だ」とか、気に食わない意見や排除したい前提があるとき、ぼくらはこういった否定のストックフレーズで優位に出ようとしてしまう――もちろ…

トヨタとトランプ、新聞が論じない点について

Toyota Motor said will build a new plant in Baja, Mexico, to build Corolla cars for U.S. NO WAY! Build plant in U.S. or pay big border tax.— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2017年1月5日 トヨタ自動車は、合衆国で売り出すカローラをメキシコ…

もっとローコンテクストで愛してもいいんじゃあないか

「好きなひと」に頭を撫でてもらったり、手を繋いだり、抱きしめてもらったりすること。性的なことじゃないんです、ちょうど、親がこどもにするような――わたしは両親からではなかったけれど――触れるというイベントが毎回、いちいち、とてつもない感動を伴っ…

大切なひとの前に出てゆき、なにかを本音として語るということ

この数年間ずっと逃げてきたけれど、今年こそ「本音とは何をどうすることなのか」という問題を落着させようと思う。 そもそも問題意識として、ぼくらはひととやりとりするときに、自他の言動や行動を既存の概念に押し込んで管理するわけだが、その管理センタ…

せめて友だちのことぐらいは翻訳できるようになりませんか

616 名前:いいちこ飲んでる名無しさん[sage] 投稿日:2014/06/13(金) 12:34:59.37 ID:6+eXXiTQ>>615なんであの監督クビになったの 617 名前:いいちこ飲んでる名無しさん[sage] 投稿日:2014/06/13(金) 12:35:22.12 id:C35aXC6q>>616選手のこと殴ったから 6…

2017年の目標:「奇跡(cud)を信じること、冒険のなかで肯定すること、夫婦を越えてゆくこと」

Cud pospolity:to, że dzieje się wiele cudów pospolitych.(…)Cud, tylko się rozejrzeć:wszechobecny świat.Cud dodatkowy, jak dodatkowe jest wszystko:co nie do pomyśleniajest do pomyślenia.――Wisława Szymborska「Jarmark Cudów」 ここ数年は「平…

ちくわさん、ぼくから見たよ、ちくわさん

これから、ちくわさんについて語ってゆく。語りたいという気持ちと、語らなければいけないという気持ちが以前から小さい熾火として同居していて、昨今(?)どちらもきわまってきたので年末の勢いを借りて記してゆく。と言ってもまあ、総決算というわけでは…

#今年もそろそろ終わるからいいねしたひとにコメント

みなさん今年もありがとうございました。来年も、よろしくね♡ ぴゆか @__Zzz___ '16年は、ゆかぴのすすめ(?)でふんわりをお迎えしたことで生活かわりました。ぬいぐるみに個人的な癒やしを感じる経験は小学生ぶり――「のりじ」というイノシシのぬいぐるみ…

強引な言葉遣いに私の想いが沈むとき――決めつけることについて

「好きだ」ということだけを覚えていて、その気持ちが何に支えられていたのか、何から始まったのか、本当は何だったのかということに対しての興味を失っていき、あらゆる「最初」は好きによって晦まされてしまう。向き合わなければならないのは、「好き」と…

(自分用)英語の語彙ノート

久しぶりに英語の勉強中(英字新聞を読んでメモってるだけ)。 ※出典の表記がない場合は原則「collins cobuild english dictionary for advanced learners」より引用。語義が複数ある場合は語義番号を明記。 ----------------------------------------------…

「私、白いものに目がないので」――乃木坂46・堀未央奈のコメント

今月売りの『BLT』(Beauty Lady Television, 2017年2月号・乃木坂46版)に「晴れ着だ! パーティだ! 乃木坂46全メンバー登場!」という特集があって、そのなかの「晴れ着散歩 Haregi Sampo」に載っていた、齋藤飛鳥、生田絵梨花、高山一実、堀未央奈の四人…

蔵書を整理しました(写真付き)

クリスマスのプレゼントとして、四人の友だち(物書き)に「高価な本も、稀少な本も、ぼくの蔵書からなんでも持ってっていいよ」という破格の企画をした。30~40万円分くらいの本が捌けたのは、ビブリオフィリアとして非常に寂しいけれど、じぶんの好きなひ…

入浴剤で誕生日を祝う10の方法

「ほら、あれ、ドジョウっていうのはさ、広い場所じゃないと飼育できないんだよ。だから小さい水槽じゃなくてせめて池とかが必要なんだってね」「へえ、じゃあ俺と同じかもしんねえな」「それってどういう意味?」「いやあ、俺も広い風呂にしか入りたくねえ…

来年から東アジアが大変になるので、とりあえず心の準備だけしておこうぜ

We should tell China that we don't want the drone they stole back.- let them keep it!9:59 AM - 18 Dec 2016――Donald Trump ぼくはトランプに逆張りしている人間なのだが、この日の発言は、なかでも気に入っている。せっかくなので、トランプ氏の発言の…

相談に乗ることの困難さ――「わかる」ことの支配性を自覚できない未熟さを出発点に

悩んでいる人に「分かる」と言って助けたくなる。けど、相手が本当にどん底まで悩んでいるとき、「分かる」という言葉が苦しめていることを知りました。「分かってないですよね」ある女性に言われたその言葉が、しこりになってぼくに残ります。そして本当に…

照りて待つ、柚子は不安の裏返し

「今日のは、つらかったですね」 後輩の歩幸(あゆみ)が、落ち込む私を気遣ってくれる。わたしのあとから入ってきて、いまだに続いている子たちは本当によく気の利いた子たちばかりだった。「もうわたし、ハロウィン嫌いになりそう」「私はもともと嫌いです…

今年の十二月は、いつもより握力が強くなってしまっていた

老いるということが、彼/彼女が燻らせて続けてきた「死への眼差し」を、私自身に内面化することだとしたら、今年は老いることに努めていたのかもしれないと思う。死ぬと思っているひと、死に接近しているひと、死と詩のあいだでもがいているひと、いろいろ…

はっきりしないではっきりすることで生じる詩的な態度

もはや覚えてすらないなんかの話の折りに「おもしろいね」と言ったら、「らららぎさんはおもしろいと思ってないときの"おもしろいね"がすっごいわかりやすいですよね」と打ち返され、「そうかな、あはは」みたいなはぐらかしを重ねた。ドライな発言でぶっち…

「真贋を見極めることってそんなに大事なことなんですか」という問いで殴られた話

とある日のとある政経懇話会に出席して、とある古美術鑑定士の講演を聴いた。あまり具体的に書けない訳は「政経懇話会」みたいな単語から感じ取って、みなさんの知性で察してもらいたいが、とにかくそこでこんな話を聞いた。 掛け軸の真贋を確かめるひとつの…

「専念してください」と言い続けること

ぼくは自動車の運転免許を持っていないから、つい一年半前まで、クルマのことなんか、なにひとつ知らなかった。ところが、同人誌の編集作業で自動車について大量に注釈をつけなくてはならず、図書館にこもって入門書と専門書を交互にながめてことばを覚え、…